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カテゴリ: スポット旅・イベント

エアレース

 日本で初めて開かれた飛行機レース「レッドブル・エアレース」を千葉市の幕張海 浜公園で観戦した。新しいビッグなスポーツイベントの「日本上陸」を歓迎したい。

 しかし、世界のメジャースポーツに対する「日本の関与」は薄い。スポーツは大き なビジネス市場でもある。東京オリンピックを控え、日本はスポーツビジネスへの取り組みを再構築し、「関与を強めて行く」べきではないだろうか。東通産業もスポーツ関連分野に注目しよう。

 

 レッドブル・エアレースの千葉大会は5月16日、17日の2日間開かれた。30万円の プレミアム席を含めてチケットは完売。有料観客数は2日間合計で延べ約12万人。 2003年にレースが始まって以来、最高の有料観客数を記録した。出場14選手の中に日 本人パイロットの室屋義秀さんがいたのも人気を呼んだ。 主催者はカーレースのF1と同じように、収益や配分などについては参加者に守秘義務を課す協定を結び、公表していない。従って売り上げや賞金などは不明だが、年間優勝者はF1に劣らない「数十億円の賞金獲得」と推測されている。 千葉大会の経済効果は約70億円と新聞は報じた。NHKはBSで大会終了日のゴール デンタイムに2時間に渡って録画放送した。世界のテレビ視聴者は1億人に上るとの 推定もある。

 いずれにしても、千葉大会が「成功だった」のは、間違いなく、来年以降も「日本で開催され、定着する」との期待が高まっている。 レッドブル・エアレースの魅力は「最高速のモータースポーツ」「空のF1」と言 われるスピードとアクロバティクス(曲芸飛行)な操縦技術で、「究極のエンターテ イメント」との評価もある。勝敗は判り易い。

 

 レースはプロペラ機が高さ25メートルの標識の「パイロン」が作るゲートなどで構成されたトラックを2周して「速さ」を競う。飛行機は高さは25メートル前後の低空で、煙を吐き、爆音を響かせながら時速400キロメートル近いスピードで飛び回る。 その「音、スピード、動き」の迫力が観客をしびれ、酔わせる。2本のパイロンで作るゲートの間隔は13メートルしかなく、翼長が8メートル近い 飛行機がパイロンに接触するのは珍しくない。 その場合も飛行機は損傷せず、パイ ロンが直ぐに切れる素材、仕組みになっている。しかもパイロンは数分内に修復できる。

 会場は飛行場ではなく、都市に隣接した海岸、湖、グランドなど交通アクセスの良 い場所に設営できる。設備の移動が簡単、短期日の設定が可能な「都市開催型イベン ト」も魅力だ。エアレースが始まって12年になるが、「死傷事故は起きていない」も自慢だ。 もう一つの驚きは出場14選手の「平均年齢が46歳」と高いことだ。千葉大会優勝の英国人は50歳、室屋さんは42歳で、59歳のパイロットもいる。操縦中にはF1の倍以上のG(重力加速度)がかかる。強い体力が必要だが、「経験がモノを言う高度なス ポーツ」でもあり、パイロットには熟練者の「品格」が感じられる。

 

 主催はオーストリアの清涼飲料メーカーの「レッドブル」。昨年から統一された飛行機のエンジンとプロペラは米国社製。機体は何種かあるが、室屋さんは米国ジブコ社製に搭乗している。計測機器はスイスの時計メーカー、ブライトリングが提供して おり、日本開催でも日本企業の影は薄い。 機体の素材にカーボンファイバーが使われているので、日本製品が利用されている 可能性はある。それでも、エンジンや機体製造など肝心な部門へ「日本企業の関与」 がないのは、日本の航空機産業の立ち遅れ状況と無関係ではないだろう。日本には 「ゼロ戦」の実績があり、せめてプロペラ機の分野にはもっと進出出来ないのかと思 う。

 

 日本の企業は「世界のメジャースポーツ・ビッグイベント」のスポンサーにはなれても「利権が絡むビジネスには食い込めない」との背景もある。メジャースポーツの日本開催が実現しても、「運営の主導権」は欧米が握り、日本は「お客様、貸し座 敷」に留まっている。

 メジャースポーツは「巨大な利権」を生む。だから、一旦、握った利権は手放さな い。日本はメジャースポーツに参加したり、会場提供は出来ても、「開催・運営」の 主体にはなれない。 となると、日本は新たな「メジャースポーツ、ビッグゲーム」を自ら育て、「新利権を確立」するしかない。その場合、足元のアジアがベースになる。中国、韓国など 東アジアの近隣諸国のスポーツレベルが向上している。こうした国々の選手やチーム との「対抗戦をビッグゲーム」へ育てて行くことは出来ないだろうか。

 

 中韓とは政治的対立が続いている。こうした時こそスポーツや文化交流をむしろ活発化して事態の打開を図るべきだろう。欧米発祥ばかりでなく、「アジア生まれのメ ジャースポーツ」があってもいい。日本のスポーツ界、メディア、経済界そして政 府・自治体が一体となった努力を期待したい。オリンピックだけでなく、ラグビーのワールド・カップなど世界のビッグなスポーツイベントの日本開催は目白押しだ。競技場の新増設がラッシュ、設備やスポーツ観 戦のスタイルもIT化が進んでいる。東通産業にとっても大きなビジネスチャンスが あるのではないだろうか。

 メジャースポーツへの「日本の関与」とともにその関連に「東通産業の関与」が実現すれば、こんなエクサイティングなことはない。

社外取締役 上田 克己

エクサイティング

本社会議室にて

 

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